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数の神秘−八の不思議
「八」は日本人が好む数字であり、最高位を占める数である。八は「末広がり」といって喜ぶのは、ただし数ではなく、裾が開いた形からくるイメージである。
八という数字は、中国では古くより非常に重大な意味をもって出てくる。紀元前十世紀ごろまとめられた易経における八卦に関係しているのであろう。宇宙のすべては、陰と陽を八卦で組み合わせることによって生まれるとされた。
わが国最初の書物「古事記」、また「日本書紀」には、八へのこだわりが多く見られる。大八島、八尋殿、八咫烏、八十建,八衢、八重雲・・・、三種の神器は、八咫鏡・八十握剣、八坂瓊勾玉と、鏡、剣、玉にみな八の形容詞を冠らせている。八は多大の意の日本における聖数であり、呪力のある数といえる。
法隆寺夢殿
7世紀後半から8世紀はじめ造られた天皇陵は、八角形をした八角古墳であると云われ、天智天皇陵、天武・持統天皇合葬陵、文武天皇陵など重要な古墳の多くは、いずれも八角形をしている。また、伊勢の神宮の御神体である鏡は、八稜鏡(八咫鏡)とも云われ、この八稜鏡の「八」と、八角古墳の「八」とは単なる数字の一致に止まるものでなく、思想的に密接な関連があるとされる。
中国では古くより、八角形の宗教哲学というべきものが成立し、それは天上の神(上帝)の儀式と、自然哲学、天文暦学、気象学が関連づけられた宇宙論でもある。中国の古代では上帝(太一神)の祭は八角形の壇の上でなされるが、それは全宇宙を八角形として捉える宇宙論の哲学があったからであろう。
それが日本にも祭祀儀礼として取り入れられ、宇宙の最高神の祭を行っている天子が天皇であった。奈良法隆寺夢殿、京都吉田神社大元宮、日光東照宮奥の院も八角堂である。現代の御即位の大礼の際には、天皇は八角形の「高御座」に入られ、皇后は八角形の「御帳台」に入られ式が行われる。
八角形は、東西南北とその中間の合わせて八方向をも表現しているが、宇宙のかたちとして,古代の中国やわが国では非常に重要な意味を持っている。宇宙には八極や八柱があるといわれ、八角形、八方は八方向に広がる宇宙空間全体を表すことばであろう。